こんにちは。
今回は薬屋のひとりごと26話の「鉛」について簡単に考察と解説を行っていこうと思います。
前回の鱠、そして前々回の煙管に続いて猫猫の科学的な知識が炸裂する回になっています。
ここ最近の話は特に勉強になる話が多くて読みごたえがあります。
その一方で、マンガ内の説明以上に調べてみるとさらに勉強になります。
今回は主にはんだの凝固点について調べてきたので、ぜひ一緒に勉強していきましょう!
また、壬氏と祭事の関係性についても軽く解説していきます。
この描写はもしかしたら先につながる描写になるかもしれないので、こちらもぜひチェックしてください。
あらすじ
羅漢から猫猫に対して事件調査の依頼があったことを告げる壬氏。
猫猫は快く承諾し、馬閃と名乗る武官とともに調査に行く。
事件の内容というのは、彫金細工師が突然死してしまい、その息子3人に残された意味深な遺言を解いてほしいというもの。
実際に細工師の部屋に行くと、3兄弟はそれぞれ形見の品をもらっておりこれがヒントになるのではないかと猫猫は考察する。
ほかにも不思議な家具配置や家の外の栗の木などにも注目していき、猫猫は解決のヒントを次第に見つけ出す。
金属が溶けたのはどのような原理?
まずこの話で最大の驚きの点は、金属が日光で溶けてしまったという事実でしょう。
金属といえば、水銀などを除くと超高温にならないと溶けないイメージが強くありますよね。
それにもかかわらず日光が集中した程度の熱で金属が溶けたことに驚きを感じた人も多かったのではないでしょうか。
猫猫の言うように、金属というのは混合することで融点、いわゆる溶ける温度が低くなるのです。
では果たしてどのような原理でこの現象は起こっているのか。
私なりに調べてみました。
凝固点降下という現象
金属が混合すると低温でも溶ける現象は、「凝固点降下」と呼ばれる現象です。
凝固点降下とは、金属にかかわらず複数の物質が混合されることで、混合物質(まざったもの)の溶ける温度が混ざる前の個々の溶ける温度より低くなる現象です。
簡単にまとめると、二つ以上のものを混ぜることでもとよりも低い温度で溶けやすくなる現象のことです。
こんな現象が本当に起きるのかいささか疑問に思う人もいると思いますが、実はこの反応は身近なところでも起こっています。
その例をご紹介しようと思います。
凝固点降下の例:氷と塩
一番身近な例は氷と塩を混ぜ合わせた現象です。
氷に塩を振るとその部分だけものすごく冷えている、ということが起こった経験はないでしょうか。
または雪が降った日に塩を振っておくと溶けやすくなるという現象はいかがでしょうか。
これも実は凝固点降下の現象なのです。
後者の例の雪に氷をかけると溶けやすくなるというのは、凝固点降下によって氷として成立する温度が低くなり(塩を振ると水は-20℃くらいまで凍らない)、0℃ではまだ固まらなくなったからです。
一方で氷がより冷たくなるのはなぜなのでしょうか。
簡単に解説してみようと思います。(本編からは脱線しているので、読み飛ばしてもらっても構いません)
(余談)氷に塩を振ると冷える仕組み
1.氷に塩を振ると凝固点降下が起きる
先ほども説明した通り、氷に塩を振ると凝固点降下が起きます。
具体的には、水は0℃以下にならないと普通は氷にはなりませんが、塩と混合することで-20℃くらいまで氷にならなくなります。
つまり0℃ではまだ水の状態を保つのです。
2.塩を振った部分だけ水に溶ける
1で説明したように、塩を振った氷は0℃では液体の水のままなので、その部分だけ水になります。
3.塩を振った氷が溶けたときに周りの熱を奪って、近くの氷をより冷やす。
ここが一番の肝です。
塩を振った部分の氷は確かに溶けるのですが、溶けた際に周りの熱を奪う、つまり、より周りを冷やすという現象も同時に起きるのです。
これは打ち水をして水を蒸発させると周りが涼しくなるのと全く同じ現象です。
これによって、塩を振った部分では水に溶けているのにもかかわらず、全体としてはより冷えた氷が完成するのです。
今回のはんだも同じ!
だいぶ話がそれました。
以上のような凝固点降下の原理が、このはんだでも用いられているのです。
はんだは基本的に鉛やすずといった金属の混合によって生成されている金属です。
ある一定の割合で金属を混合することで、凝固点降下を用いてはんだとして使いやすい融点に調節されています。
あまりなじみのない凝固点降下という現象ですが、実は色々なところで応用されている凄い原理なのですね。
彫金細工師が残した遺言とは?
続いては彫金細工師が残した遺言とはどのようなものであったかを解説していこうと思います。
猫猫が解いた彫金細工師が残したからくりを振り返りながら考察していきます。
三つの形見
彫金細工師は三兄弟に三つの形見を残しました。
確認していきましょう。
長男には作業部屋。
次男には細工の施された家具。
三男には金魚鉢。
家具を正しい位置に配置する
遺言には『皆 昔のように茶会でもするといい』とありました。
猫猫はそれを茶会した時のように家具の配置を整えろという意味にとりました。
日焼けの跡があったところに水を入れた金魚鉢を置き、茶会をするような時間になるのを待ちます。
すると金魚鉢を通して一点に集中した光が鍵穴に差し込み、先ほど紹介した凝固点降下により溶けやすくなった金属が鍵穴から溶け落ちて鍵穴の詰まりがなくなりました。
溶けた金属が鍵を生成する
ここが少しわかりにくかったかもしれません。
日光によって溶けた金属は、そのまま棚の中に置かれた鍵の型に溶け落ちて固まりました。
そのため、棚をあけたときに出来立ての鍵が中に入っていたのです。
そしてその鍵が、開かない上部の棚の鍵になっています。
棚には配合を表す金属が
棚の中には金属が入っていました。
ここからは猫猫の考察になりますが、おそらく棚の大きさと入っている金属から秘伝のはんだ金属の混合比率を知ることができるのではないかと、そのように考えています。
これに気づいたのは三男だけのようでしたが。
つまり、この形見と遺言を通して、彫金細工師は息子たちに秘伝のはんだ金属の配合を伝承したかったのではないかと考察されます。
壬氏と祭事の関係性
では最後に壬氏と祭事の関係性について軽く触れていこうと思います。
なお、ここから壬氏の正体に関する真髄にかかわる考察が入るので、まだ知りたくない人はここで読むのをやめてもらうことをおすすめします。
祭事は宦官には関係がない
「本来私の立場に祭事など関係ない」という壬氏のセリフは、「本来の私の立場」というところがキーになっている気がします。
なお、ここからは以前の考察に基づいて壬氏は実際には”皇帝の息子”であり立場的には”皇帝の弟”をふるまっているという仮定を置きます。
「本来の私の立場」というのは”美形宦官の壬氏”という立場についての発言だと思います。
宦官というのは本来身分の低い立場です。
いくら壬氏が上の立場とは言え、宦官という立ち位置では祭事は関係ないのでしょう。
つまり裏を返すと、”皇帝の弟”という立場では祭事が関係あるということを暗に示しているのではないでしょうか。
わざわざ祭事という言葉が出たからには、恐らく今後に祭事にまつわる出来事が起きるのだと思います。
その時の壬氏は”皇帝の弟”という立場でいます。
もしかしたらそこに猫猫が出くわす、といったシーンも出てくるのではないかと期待できますね!
何にせよ、このセリフでより一層壬氏が祭事を行うくらい上の立場=皇帝の弟説が濃厚になりました!
まとめ
今回は薬屋のひとりごと26話「鉛」について解説と考察をしていきました。
BG版の5巻最終話ということもあり、壬氏についても羅漢についても踏み込んだ回となりました。今後の展開にも注目です!